内丸鉋用曲面砥石について
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丸鉋は難しい、特に砥石の調整と刃研ぎは熟練を要する、と言われている。
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■木工で丸物を作る時、部材を旋盤で削り出し、サンダーで仕上げる方法が、今日では最も一般的に思われる。厚めの塗装を掛けるならそれで十分だが、檜・杉・檜葉などの軟材を使って白木仕上げをする場合、或いは木目を生かした薄い塗装で仕上げる場合など、そうしたやり方では折角の美しい木肌が損なわれるのではないかと心配になる。やはり良く切れる丸鉋で仕上げたい。
ところが、多くの大工さんや家具職人はあまり丸鉋を使わず、平鉋やサンダーで済ませるそうだ。現在、丸鉋を日常的に使う人と言えば、宮大工、桶や樽職人、一部の家具職人、そして一部の工芸家に限られるのだろうか。難しいと聞けばなおさら挑戦したくなるもの、時間に縛られず納得の行くまで試行錯誤できるのがアマチュアの特権だ。
■一般に丸鉋は購入しても直ぐには使えない。求める曲面に合わせて仕立て直す必要がある。丸鉋は曲面研ぎと曲面台の調整ができなければ使いこなせない。中でも難関は砥石の製作だ。丸鉋用砥石の理想的な曲面は、以下に述べる通り、円ではなく 楕円である。しかしながら、正確な楕円面の工作は容易ではない。何か良い方法はないか、勘や経験に頼らず合理的な方法で曲面砥石を作ることはできないものか少し考えてみた。と言っても所詮素人の浅知恵、軽く読み流していただきたい。
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内丸鉋用曲面砥石の近似曲面計算 試論
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1. 内丸鉋で丸物を削る時、
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台の径 (以下、径=直径とする)が仕上げ径となる。勿論、台の径より細い部材の仕上げは可能だが、 台の径と仕上げ径が一致すれば、より美しい削り面が得られる。
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2. 内丸鉋の台尻から刃先を見通した時、
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台の径と刃の径が一致することが望ましい。
鉋刃の仕込み角度を8分勾配 (=38.66°)とした時、切刃角度も38.66°なら、必要な砥石の径も鉋台の径と同じで良いことになるが、一般に切刃角度は25°~32°位であるから、仕込み角度とは 6°~14°程度の差が生じる。例えば、10円硬貨を垂直に立てて正面から見れば円に見えるが、少し傾ければ 楕円に見える。即ち、鉋刃の仕込み角度と切刃角度の差によって生じる楕円が、砥石の理想曲面となる。
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3. しかしながら、正確な楕円曲面を作るためには、
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高精度な工作機械が必要であり、アマチュアには困難である。
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4. 一般に内丸鉋の台の径は、
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有効な刃巾の1.5倍~数倍程度に設定されるので、実用的な砥石の曲面は、楕円の長径方向 (横に長い方向)の曲面の内、中央部分の50~70%程度が理想の砥石曲面と一致すれば良いことになる。もし、その楕円曲面を 近似的な円に置き換えることができれば、内丸鉋用曲面砥石の製作と研ぎは一気に簡易化される。
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5. そこで、近似的な円を求めるために、
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鉋刃の仕込み角度を38.66、切刃角度を25°~32°まで0.5°刻みで変化させた時に得られるそれぞれの楕円の短径を計算する。 (計算式及び計算は略)
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6. 次に、楕円方程式を使って、
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前記 5.で得られたそれぞれの楕円について、XY座標上の位置を求める。仮に楕円の長径を20とすれば、楕円はXY座標上では左右上下対称であるから、X値を 0 から7まで0.5刻みに変化させた時のY値を求めれば十分である。 (計算式及び計算は略)
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7. 次に、前項6.で得られた楕円の座標値に対して最も誤差の少ない円を求める。
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(計算式及び計算は略)
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8. 以上の結果から、近似的に次の計算式が導き出された。
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■即ち、内丸鉋の台の径を:Lm
鉋刃の仕込み角度を:38.66° (=8分勾配)
切刃角度を:D
近似円の径=砥石曲面の径を:Ls とすると
内丸鉋の台の径 × 常数 ÷ 切刃角度 = 砥石曲面の径
Lm × 35.2 ÷ D = Ls
上記計算式中の 常数35.2は、切刃角度によって34.8~35.6程度に変化するが、
その平均値として35.2を採用した。上記の計算式は、
内丸鉋の台の径が 12mm~100mm
切刃角度が 25°~32°
台の径が刃の有効巾の 1.5倍~数倍
程度の時、砥石面のどこでも誤差は0.5%以内に収まり、PC上で作図した結果とも矛盾しないことを確認した。
■更に計算式を簡略化することが可能である。
仮に、切刃角度を 28.16°とすれば、
内丸鉋の台の径 × 1.25 = 砥石曲面の径
つまり、砥石の曲面の径を鉋台の径の1.25倍程度に設定すれば、十分実用的な丸鉋用曲面砥石が出来上がることになる。
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9. 上記近似計算式は、あくまでも計算上及び作図上で満足するものである。
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現在手持ちの丸鉋四種 (台の径が、30mm、36mm、75mm、90mm)で、上記近似計算式に基づいて製作した曲面砥石を使って実験したところ、ほぼ満足の行く結果が得られた。 しかしながら荒仕工鉋・中仕工鉋・仕上鉋など、それぞれ用途によって刃の出し具合や刃の両端の絞り加減などが異なることから、実際的な妥当性を確認するためには、更に十分な実験を繰り返さなくてはならない。
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10. 本試論は内丸鉋の場合に限り有効であって、外丸鉋の場合については別途考え
なければならない。
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砥石の製作法や鉋台の調整法については後日掲載します。
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