Music of Norway

先日、学生時代の音楽仲間から久し振りに電話があり、Audio & Music談義に花が咲いた。その中で 「最近自分は1700年以前及び1900年以降の作品を主に聴いている。中でもNorwayの音楽に嵌まっている」 と述べたら、そのNorway音楽を紹介しろと催促された。そこで、手持ちのAlbumから何枚か取り上げることにした。
Helge Lien (2017.6.30)

Norwayの音楽、取り分け器楽作品の特徴を一言で言えば、Classic/Jazz/Fusion
/Rock/Pops/現代音楽/前衛音楽などの境目がないことにある。これまでに聴いたNorwayの音楽家を生年順に上げれば、
 Jan Garbarek (ヤン・ガルバレク、1947年生) Saxophone
 Terje Rypdal (テリエ・リピダル、1947年生) Guitar
 Ketil Bjornstad (ケティル・ビヨルンスタ、1952年生) Piano
 Jon Balke (ヨン・バルケ、1955年生) Piano
 Tord Gustavsen (トルド・グスタフセン、1970年生) Piano
 Helge Lien (ヘルゲ・リエン、1975年生) Piano
 Jacob Young (ヤコブ・ヤング、1979年生) Guitar
 Mathias Eick (マティアス・アイク、1979年生) Trumpet

ではその第一段として、若手のPianist Helge Lienを紹介しよう。
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先ず、どこかで聴いたことのあるような曲から。
 【演奏】 Helge Lien Trio
 【題名】 Natukasii(懐かしい)
題名が日本語のRoma字表記であることから、Helge Lien氏は度々来日されFanも多いことが窺われる。曲は文部省唱歌を思わせる平易なMelodyである。抑も文部省唱歌は明治時代の初期、英国の音楽に強い影響を受けて成立した経緯から、英国(England/Scotland
/Wales/Ireland)
に伝わる古謡や民謡に似た旋律が多いとされる。Norwayの古い音楽もまた英国系、特にCelt音楽との近似性を見出すことができる。つまり、日本とNorwayは英国を介して音楽的には共通の要素があると言えよう。
次に、Helge LienのPiano Solo。
 【演奏】 Helge Lien
 【題名】 Kattenslager
Prepared Piano(プリペアド・ピアノ)奏法による前衛的な即興演奏。小難しい曲ではあるがPianoの響きが美しく飽きることはない。
今度はVocalを加えたAlbum。
 【演奏】 Piano:Helge Lien、Vocal:Ruth Wilhelmine Meyer
 【題名】 Memnon: Sound Portraits of Ibsen Characters
Norwayの劇作家 Ibsen(イプセン)の作品を題材とした前衛音楽。Memnon(メムノン)はGreek神話に登場する人物。
Kattenslager以上に難解かつ幻想的な作品。
硬派な音楽が続いたので、もう少し耳当たりの良い曲を。
 【演奏】 Helge Lien Trio、Violin:Adam Baldych
 【題名】 Bridge
Helge Lien TrioにPolandのViolinist Adam Baldychを加えたAlbum。Adam Baldychは決して技巧をひけらかすことなく一音一音に磨きをかけた美音Violinist。Helge Lienとの相性は抜群。
最後に日本語の擬声語を曲名に取り入れた珍しい作品を。
 【演奏】 Helge Lien Trio
 【題名】 Guzuguzu
収められた曲は、
 Gorogoro(ごろごろ)、Guzuguzu(ぐずぐず)、
 Nikoniko(にこにこ)、Garari(がらり)、Jasmine、
 Chokichoki(ちょきちょき)、Kurukuru(くるくる)、
 Shitoshito(しとしと)
日本的な情緒溢れる音楽。Helge Lien氏は相当な日本通。
Terje Rypdal (2017.7.6)

1945年以降の現代音楽や前衛音楽は、音楽表現の可能性を追求した作品として評価することはできても、日常的に繰り返して聴くにはどうかと思われる節があった。自分も1960年代の後半から80年代にかけて「日本の現代音楽展」なるConcertに足繁く通いつつも、中には「音楽」と言うより寧ろ「音苦」ではないかと思われる作品もあり、大いに疑問を抱いた記憶がある。

そうこうする内に「Miles Davisと仲間たち」による「Fusion Music」が脚光を浴びる時代がやって来た。12音技法/不協和音/変拍子/無拍子/偶然性/即興性等、現代音楽や前衛音楽に強い影響を受けながらも、親しみ易いMelody/美しい和音/多様なRhythm/世界中の珍しい楽器の採用等、実験音楽としてではなく、聴いて楽しめる要素を大幅に取り入れた作品として、Jazz/Rock界だけではなくClassic界にも多大な影響を与えた。

Miles Davisと仲間たち
Miles Davis 1926~91 The Juilliard School Trumpet
Joe Zawinul 1932~ Vienna Music Academy Piano
Wayne Shorter 1933~ New York University Saxophone
Ralph Towner 1940~ Vienna Music Academy Guitar
Herbie Hancock 1940~ Grinnell College Piano
Chick Corea 1941~ The Juilliard School Piano
Gary Burton 1943~ Berklee College of Music Vibraphone
Keith Jarrett 1945~ Berklee College of Music Piano
Miroslav Vitous 1947~ Ceska filharmonieのBass奏者に師事 Bass
Terje Rypdal 1947~ 独学、Miles Davisの強い影響を受けた Electric Guitar

以上は、日頃よく聴くFusion Musicianである。音楽歴を見ると独学で大成したTerje Rypdalを除く9名は、名門の音楽学校、或いはClassicの一流演奏家に師事している。つまり、音楽の基礎を充分に修得した上でFusion Musicの道に進んでいる。中でもKeith JarrettはClassicのAlbumを数多く発表している。従って、彼等の作品は所謂「商業音楽」に留まらず、西洋音楽史上に位置付けられる「現代の音楽」の一つの潮流として捉えることができよう。

Norwayにはそうした影響を強く受けた音楽家が多い。中でも、Jan Garbarek(ヤン・ガルバレク)、Terje Rypdal(テリエ・リピダル)、Ketil Bjornstad(ケティル・ビヨルンスタ)は、同国音楽界の大御所的な存在と言われている。

では、 Electric Guitaristの名手 Terje RypdalのAlbumを紹介する前に、本Site 「Melodic Warrior」の節で述べた拙文を再掲しよう。

「Melodic Warrior」とは何ぞや。最近入手したNorwayのGuitarist Terje Rypdal(テリエ リピダル)と英国の男声Quartet The Hilliard Ensemble(ヒリアード・アンサンブル)にFull Orchestraを加えて演奏された、表向きは Fusion に分類されながら、実際は 「西洋音楽史総覧」とでも表現したくなる壮麗な作品の題名である。Jazz/Fusion/Rock/前衛音楽/電子音楽/現代音楽/印象派/浪漫派/古典派/Baroque/ Renaissance/Gregorian Chant 等々、 西洋音楽史上のあらゆる要素を取り入れた、将に「Melodic Warrior」に相応しいAlbumと言えよう。

日頃、電気楽器や電子楽器に馴染みの薄い人にとって、Electric Guitarの音は歪みの塊みたいなものであり、とても心地良い響きには聞こえないであろう。ところが、耳を澄ませて Terje Rypdal の演奏を聴けば、歪んだ音の中にも美しく聞こえる要素があることに気付かされる。彼の奏法では、敢えて歪みを強調した場面もありながら、それがまた「美しく安らぎのある歪み」に聞こえるのはどうしたことか。素人判断に依れば、
 ・使用しているGuitar & Ampの品位が極めて高い。
 ・歪みの制御が優れている。
 ・Vibrateの掛け方が巧みである。
 ・Crescendo/Decrescendoする時、指数関数的に変化させている。
 ・そして、低音の分散和音は鳥肌もの。
など思いつくも、この件に関してはもう少し聴き込まなくてはならない。とかく半可通は結論を急ぐ傾向があるので注意しよう。

と言うことで、Terje Rypdalの弾くElectric Guitarの限りなき可能性に注目を。
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Jazz/Rockの色合が濃いAlbum。感性豊かなElectric Guitar Soundが楽しめる。(収録1975年)

【演奏】 Electric Guitar:Terje Rypdal、
 Organ:Brynjulf Blix、Trombone:Torbjorn Sunde、
 Eelectric Bass:Sveinung Hovensjp、
 Drums:Svein Christiansen
【題名】 Odyssey
Odysseyから3年後にしては演奏Styleはかなり変化し、ややSpace Sound風。(収録1978年)

【演奏】 Electric Guitar:Terje Rypdal、Bass:Miroslav Vitous
 Drums:Jack DeJohnette
【題名】 Rypdal, Vitous, DeJohnette
晩年のMiles Davisや初期のWether Reportを彷彿とさせる。
これぞFusion Sound。(収録2003年)

【演奏】 Electric Guitar:Terje Rypdal
 Trumpet:Palle Mikkelborg、Electric Piano:Bugge Wesseltoft
 Keyboard:Stale Storlokken、Electronics:Marius Rypdal
 Bass:Bjorn Kjellemyr、Drums:Jon Christensen
 Percussion:Paolo Vinaccia
【題名】 Vossabrygg
Grand PianoとElectric GuitarのDuo。Ketil Bjornstadの叙情的なPianoとTerje Rypdalが奏でるElectric Guitarの「美しい歪み」との対比が聴きどころ。(収録2008年)

【演奏】 Electric Guitar:Terje Rypdal、Piano:Ketil Bjornstad
【題名】 Life in Leipzig
Terje Rypdalの問題作。詳しくは上の拙文を。(収録2013年)

【演奏】 Electric Guitar:Terje Rypdal
 Vocal:The Hilliard Ensemble
 Orchestra:Bruckner Orchester Linz
 Orchestra:Wroclaw Philharmonic Orchestra
【題名】 Melodic Warrior
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